
お前に聞いてほしい話がある。
俺がなんで「こんなところ」にいるのか。
全部話す。長いぞ。覚悟しろ。

ガキの頃、俺はクラスのピエロだった。
遠足で見たゴリラのモノマネ。
先生の口癖の完コピ。
給食のプリンを顔面に突っ込むやつ。
何でもやった。みんなが笑えば、それだけで生きてていいと思えた。
でも「好き」でやってたわけじゃねえよ。
親は離婚してた。最初から「普通」なんてなかった。
参観日、教室の後ろに並ぶ親たち。俺の席の後ろだけ、空席。
友達の家に行くと、四人で食卓囲んでカレー食ってんの。
「おかわりある?」って母親が聞いてんの。
あの空気が、マジできつかった。
だからピエロやってた。
笑わせてりゃ、ここにいていいって思えた。
笑ってくれてる間だけ、透明人間じゃなくなれた。
それしか方法を知らなかったんだよ。ガキだから。
小学4年で、もう学校に行けなくなった。
教室の空気が重い。誰とも喋りたくない。笑えない。笑わせられない。
ある朝、ランドセル背負って玄関で固まった。足が動かなかった。
それから不登校。中学に上がっても、3年間まるまる教室の床を踏まなかった。
ネトゲに逃げた。リアルがクソだったから。
MapleStory の画面の中で、百人以上を束ねるギルドマスターになった。
画面の向こうの奴らは、俺の家のことなんか知らない。
「マスター、次どこ行きます?」って聞かれるのが嬉しかった。
頼られた。必要とされた。
6畳の部屋のモニターの前だけが、マジで唯一の居場所だった。
ある日、ゲーム中に
母親がPCのコンセントを引き抜いた。
「----しばらくネット禁止だから」
ブチッて音がして、画面が真っ暗になった。
チャット欄に「マスター?」って流れてるはずなのに。
百人のギルメンが待ってるのに。俺が作った場所なのに。
何も言えなかった。コンセントを見つめるだけだった。
その日からネトゲ廃人卒業。代わりに地元のゲーセンに入り浸った。
タバコの煙が充満した、靴底がベタつく床の上で、
ポケットの100円玉を数えてた。あと3回。あと2回。
常連の大人たちと混ざって、タバコ覚えて、酒覚えて、パチンコまで覚えた。中学生だぞ。
静岡から浜松まで自転車で音ゲー遠征した。
太鼓の達人、jubeat。県境を越えて、汗だくで筐体に張り付いた。
ナンパで JK の彼女もできた。
身長低めの男に 2 回寝取られた。マジで笑えよ、2 回だぞ。
内申点はもう壊滅してた。
全日制の高校なんか、書類で弾かれる。
行けたのは、夜の定時制だけだった。
高校は、夜間定時制。昼間の学校には行けなかった。
母親は学費を出さなかった。
だからファストフード店と居酒屋を掛け持ちして、全額自分で払った。
油まみれのフライヤーの前で4時間。170度の油が腕に跳ねる。
そのあと居酒屋でジョッキ洗い。
指先がふやけて、皮がめくれた。
冬はそこからひび割れて、水に触れるたびに血が滲んだ。
絆創膏が足りなくて、テープで巻いてた。
日中はバイト。夜は学校。
それ以外の時間なんてねえよ。電車の中で立ったまま寝てた。

17歳。定時制の教室で、RADWIMPS を聴いた。
歌詞が刺さった。意味を全部知りたかった。
でも辞書がねえと半分わかんねえ。だから英語の勉強を始めた。
それがきっかけだった。マジで音楽 1 曲が人生を変えた。
英語の女性の先生が、放課後に時間くれた。
「お前、もっと読んでみな」って図書室に連れてかれた。
岩波文庫、ちくま文庫、新書のコーナー。
読んだ。片っ端から読んだ。世界が広がった。
気づいた。
俺には何もない。学歴もない。スキルもない。コネもない。
履歴書の「資格」の欄、空白。「特技」の欄も、空白。
戦える武器が、一つもなかった。
「このままじゃ、
どこに行ってもゴミ扱いだ」
定時制 2 年目。大学を受けると決めた。
中1のドリルから。マジで中1からだぞ。
分数の計算からやり直した。
17歳が、表紙にひまわりの絵が描いてあるドリルを解いてる。
惨めだったよ。
ブックオフの100円コーナーで買った参考書がボロボロになるまでやった。
バイト終わりの深夜2時、缶コーヒーの空き缶が3本並んだ机で、
目がショボショボの状態でひたすらページをめくった。
わかんなくて、悔しくて、ドリルを床に叩きつけた夜もあった。
拾って、またやった。
偏差値 30 から戦えるわけがない。
だから戦線を絞った。英語、国語、倫理。3 科目だけに全部突っ込んだ。
数学も理科も社会の他科目も、最初から捨てた。
公立大学、現役合格。
22 歳で大学を卒業した。留年なし。現役。
軽音楽部に入った。スタジオの匂い。アンプのハム音。チューニングのペグを回す音。
くだらない話で笑い合えた。打ち上げのファミレスで朝まで。
人生で初めての「普通の青春」。
普通ってこんなに良いもんなのかよ、って泣きそうになった。
大学を出て、新卒で上場企業に入った。総合職。
レールに戻れた。22 歳の俺、人生で初めて「普通」のスーツを買った。
2-3 年は勤めた。同期に、後の妻がいた。
2 人とも営業系。何度もくっついて、何度も別れた。それでも腐れ縁で続いてた。
会社員時代、暗号資産取引にハマった。
チャート見ながら自動化したくて、独学でプログラミング始めた。
深夜、業務用 PC じゃなくて私物のノートで、コード書いた。
それが後に効いてくる。
でも結局、会社員は向いてなかった。
朝礼で社訓を唱和する。上司のゴルフの話に相槌を打つ。
レールから降りた。退職届、出した。
転職を試みたけど決まらなかった。
フリーター。引っ越しの日雇い。ティッシュ配り。スポットワーク。
月末になると通帳を見るのが怖かった。
その間に、海外にも行った。
シンガポール、オランダ。観光じゃない。
DM して直接会いに行って、現地の起業家と飯を食った。
「人とどう関わるか」を、いっぺん壊して組み直したかった。
帰ってきて、個人で広告業を始めた。月 100 万まで来た。
それを元手に、自分の会社を作った。WEB 広告の会社。
家賃 6 万のボロい事務所からのスタート。
エアコンの効きが悪くて、夏は扇風機を3台回してた。

事業は、大当たりした。
年商1.6億
正社員は最大 3 人。あとは若いスタッフ何人かに業務をぶん投げて回してた。
オフィスを移転した。同期だった彼女と、結婚もした。
タワマンの内見に行った。外車のカタログを取り寄せた。
正直、調子に乗ってた。完全に天狗だった。
1杯2,000円のウイスキー。5万のスニーカー。
若いスタッフに「焼肉行くぞ」って毎週おごってた。一番高い肉から注文して、「俺の奢りだから」って言うのが快感だった。
「俺はやった側の人間だ」って本気で思ってた。
今思うとマジでクソダサい。あの頃の俺をぶん殴りに行きてえよ。
----そんなもん、長く続くわけがなかった。
同期営業の中に、後の妻がいた。
2 人ともガツガツしたタイプで、最初はライバルだった。
何度もくっついた。何度も別れた。
同じ営業先で鉢合わせて気まずくなって、それでも翌週には飯食ってた。
腐れ縁、って言葉、あれは俺と妻みたいな関係を指す。
「もう、こいつでいいか」
「こいつ以外、無理かもな」
会社の業績がピークに乗った頃、入籍した。
タワマンの内見に行った。眺望のいい高層階。
外車のカタログを取り寄せた。納期は半年待ち。
「俺はやった側の人間だ」って完全に天狗だった頃の話。
でも、結婚の決め手は派手な指輪でも豪華な式でもなかった。
酒の入った居酒屋の帰り道、肩がぶつかる距離で歩いていた、それだけだった。
家に帰っても何も話さない夜が、それでも一緒にいて平気だったから。
この結婚が、後で俺を救うことになる。
まだ、それは知らなかった。

結婚して間もなく、
取引先に詐欺られた。
数千万の売上が、回収不能になった。
キャッシュが一気に枯れた。融資の利息も払えない。給料も出せない。オフィス代も出せない。
倒産するには、十分すぎる額だった。一発アウト。
関わってた連中は全員、契約打ち切り。
残ったのは、莫大な負債だけだった。
負債2億
会議室に一人ずつ呼び出した。
パイプ椅子に座らせて、向かい合って。
「もう給料を払えない」
10回以上、同じセリフを言った。声が枯れた。
俺についてきてくれた奴らだぞ。
終電まで一緒に残業して、駅前のラーメン屋で替え玉頼んでた奴らだぞ。
「社長、俺ここで頑張りますよ」って言ってくれた奴だぞ。
目の前で泣かれた時、何も言えなかった。
「すみません」しか出てこなかった。
会議室のドアを閉めて、一人で嗚咽した。声を殺して。
家賃6万のボロい事務所で始めた会社。
扇風機3台の夏を越えて、年商1.6億まで来て。
全部、消えた。跡形もなく。
20 代で、自己破産。

金がなくなった。
仲間がいなくなった。
信用が消えた。
電話が鳴らなくなった。LINEの通知が来なくなった。
誰からも連絡が来ない。スマホが文鎮になった。
朝、目が覚めるのが一番つらかった。
「あ、今日も生きてんのか」って思う瞬間が、毎朝ある。
コンビニのおにぎり、120円。レジの前で財布を開いて、小銭を数えた。
スーツは質に入れた。革靴も。時計も。
名刺は全部シュレッダーにかけた。
「代表取締役」って書いてあった紙切れが、細切れになって落ちてった。
年商1.6億だった男が、120円のおにぎりで悩んでる。笑えよ。
何をやっても続かなかった。何も手につかない。
風呂に入れない。歯も磨けない。カーテンも開けられない。
コンビニに行くのに、玄関で30分座り込んだ。
「死ぬんだな、俺」
「死にたいんだな」
「でも、死ねないんだな」
うつ病の診断書を握りしめて、薬を飲んで、天井を見てた。
天井のシミの数を数えた。7個。いや8個。
何回数えても同じ数にならない。
薬の副作用で口の中がカラカラで、水を飲んでも喉が渇いてて、
頭がボーッとして、今日が何曜日かもわかんなくなった。
カレンダーを見ても、数字が頭に入ってこない。
1日が48時間に感じた。何もしてないのに。
妻と、ノアが、隣にいた。
ノアは黒いトイプー。破産が決まる前、まだ会社が動いてた頃に飼い始めた。
名前は最初「黒ちゃん」だった。フランス語で黒は noir (ノワール)。だから「ノア」になった。
布団の上で、ノアが俺の腹に乗ってくる。妻は隣で本を読んでる。
誰も何も言わない。それだけで生きてられた。
あの時、あいつらがいなかったら----
今ここに俺はいない。マジでそう思う。
妻だけが、隣にいた。

何ヶ月経ったのか、わからない。
季節が変わってたことだけ、窓の外の光で知った。
「オレにしかできないことはないのか」
毎日毎日、同じ問いをぶつけてた。
答えなんか出ない。出ないまま、天井のシミを見てた。
7個目と8個目の間のやつ。あれはシミなのかカビなのか。
そんなことしか考えられなかった。
でも、ある日ふと浮かんだ記憶があった。
教室の隅で、必死に笑いを取ってた
あの頃のガキの自分。
ゴリラのモノマネ。プリンの顔面ダイブ。
あの頃の俺は、少なくとも必死だった。
カッコ悪くても、ダサくても、必死だった。
「全部さらけ出す。
借金も、破産も、うつも。
それがオレのエンタメだ」
「いいじゃん、声いいんだからやってみなよ」
妻の一言。
布団の中でスマホをいじってた俺の横で、さらっと言いやがった。
これがなかったら、たぶん今も天井を見てる。
2023年8月。
震える手でYouTubeアカウントを作った。
パスワード設定で3回ミスった。指が震えてたから。
最初の配信、視聴者0人。
誰もいない画面に向かって、借金の話をした。声が震えた。
自分の声がスピーカーから返ってくるのが気持ち悪くて、何回もマイクの位置を直した。
30分くらい経って、1人来た。コメントが来た。
「頑張れ」って。たった4文字。
泣いた。配信中に泣いた。ダサいだろ。でも泣いた。
鼻水まで出た。マジでダサかった。
借金のこと、転落のこと、全部包み隠さず話した。
カッコつけようがないから、そのまま出した。
「弱さ」こそが、人が集まる引力だった。
同じ傷を持つ奴が、想像以上にいた。
「俺もです」「私もそうでした」ってコメントが流れてきた。
お前もか。お前もそうだったのか。
俺は前を向くことにした。
「オレにしかできないやり方で」
「目一杯、笑わせてやるよ」
ピエロは、もう一回立ち上がった。
初めてギフトが飛んできた時、手が震えた。
「きこにいのおかげで助かった」ってコメントが来た時、また泣いた。
借金2億の男の話が、誰かの背中を押してた。
2025年10月。
YouTube だけじゃ、月20万に届かなかった。
家賃も食費もそれじゃ回らない。妻もノアもいるんだから。
TikTok LIVE に移った。YouTube はやめた。
全部こっちに張り直した。
朝の雑談配信中、Bacon the Game で豚を弾き飛ばしてたら、同接が一気に数百人まで跳ねた。
画面の数字が、ずっとぐるぐる増えてた。何が起きたかわかんなかった。
「ふざけてるけど、数字はガチ」。
このサイトの上に書いてある言葉、あれ嘘じゃない。
ピエロやってきたガキが、画面の向こうで本当に飯を食ってる。

2026 年 2 月 9 日、もう一回、自分の法人を作った。
屋号は「終焉祝祭」。肩書きは「人生実験家」。借金 2 億の元社長が、ゼロから登記し直した。
今は TikTok LIVE で食って、暗号資産の自動売買 bot を回して、アフィリエイトメディアも回してる。
一本足じゃ、また転ぶ。だから三本足にした。
Discord の「アジト」も作った。共犯者って呼んでる連中がそこに集まる。
ノアも AI 化されて住んでる。毒舌キャラだ。会いに来い。
ここまで読んだお前に聞く。
お前の人生、このままでいいのか。
明日も同じアラームで起きて、同じ電車に乗って、
同じデスクに座って、同じため息をつく。
帰りのコンビニで缶ビール買って、YouTube見て寝る。
月曜の朝が来るたびに死んだ顔してねえか。
慣れねえよ。俺が言うから間違いない。
慣れたフリしてるだけだ。
日曜の夜、布団の中でスマホ見ながら、
月曜の朝を想像して、胃がキュッてなってないか。
本当に欲しいもの、諦めてないか。
「まあいいか」で済ませてないか。
済ませてるだろ。俺もそうだったから分かるよ。
俺は全部失ってから気づいた。
2億失って、仲間失って、自分すら失いかけて、やっと気づいた。
失う前に気づけたお前は、まだ間に合う。マジで。
やりたいことがあるなら、今やれ。
明日やる奴は一生やらない。
お前の中にある「このままじゃ嫌だ」って気持ち。
それ、消すなよ。周りに消されるなよ。
ゲーセンで100円玉を数えてたガキも。
深夜2時にひまわりのドリルを解いてた17歳も。
天井のシミを数えてた破産者も。
全部、同じ人間だ。今ここで喋ってる俺だ。
もう天井のシミは数えなくていい。
だから言える。
底の底からでも、這い上がれる。ダサくても。ボロボロでも。
ここまで読んだ時点で、お前はもう動き出してる。
この物語を最後まで辿った人間は、100人に1人もいない。
お前は、もうそっち側にいるんだよ。
この物語は95%がノンフィクション。
過去の自分に向けて書いた。
あの頃の、天井のシミを数えてた自分に向けて。
カッコつけてもしょうがないから、そのまま書いた。
ダサいところも、情けないところも、全部。
読んでくれたお前が、ちょっとでも笑ったり、
「俺もまだやれるかも」って思ってくれたなら、
それだけでいい。マジで。それだけで書いた意味がある。
「終焉祝祭」って名前、聞かれることがある。
人生の終焉の日まで、祭りを止めるな。そういう意味だ。
また会おう。
配信か、アジトか、お前の画面の向こうで。
次は俺が、お前の話を聞く番だ。