きこにい

きこにい

1.6億溶かした崖っぷち村長
元・年商1.6億の社長 → 詐欺被害 → 2億の負債。
自己破産、うつ病、ニート生活を経て、
「失敗」を最強の武器に変えるために蘇った男。
これは、一人の人間が「正解」を捨てて泥臭く生き直すまでの全記録である。
AGE30歳
JOBStreamer / CEO
STATUS人生再建中
MISSION世界を熱狂させる
物語を紐解く
第1章:ピエロの誕生
幼少期 〜 不登校

小さい頃の自分は、「人気者」だったと思う。
教室の中心で、動物園で見たゴリラのモノマネをしては、同級生たちを笑わせていた。
「ウッホウッホ! ウーッホッホ!」
教室が爆笑に包まれる瞬間だけが、私にとっての酸素だった。

「こーゆーことできるの、きこにいだけだよな!」

友人たちのその言葉に、私は得意げな顔を見せた。
だが、心の中は冷え切っていた。
お調子者で、人を笑わせるのが好きな少年。
それは、私が生き延びるために作り上げた、精巧な「仮面」だったからだ。

家に帰れば、そこは冷たい戦場だった。
両親の離婚。幼い頃から肌で感じていた、「うちは他の家とは違う」という違和感。
家庭という基盤が足元から崩れ去っていく恐怖を、私は教室での馬鹿騒ぎで必死にかき消そうとしていた。

ピエロを演じなければ、
壊れてしまいそうだった。

笑われていれば、愛される。面白ければ、ここに居ていい。
そうやって自分の存在価値を証明し続けなければ、自分が消えてしまいそうで怖かった。
あの頃のモノマネは、私の最初の「ビジネス」だったのかもしれない。「笑い」という対価を支払って、「居場所」を買うための。

第2章:電子の揺りかご
ネトゲ廃人時代

中学に上がると、私はピエロを演じることに疲れてしまった。
私には、新しい居場所ができていた。
モニターの中に広がる、無限の電子空間。MMORPGの世界だ。

そこは楽園だった。
「きこにい」というプレイヤーは、現実の無力な少年とは違い、100人以上のギルドメンバーを束ねるマスターだった。
顔も知らない、本名も知らない仲間たち。
彼らは、私の親の離婚も、学校での成績も気にしない。ただ純粋に、私の「プレイ」と「統率力」だけを評価してくれた。

「さてお待たせ! マスターが来ましたよ!」

ログインした瞬間に飛び交うチャットの文字。
その光だけが、私の世界を照らしていた。
学校には行かなくなった。昼夜逆転し、食事も忘れ、キーボードを叩き続ける。
気兼ねなく過ごせるこの世界こそが、私の本当の「家」だった。

だが、その楽園は、最も残酷な形で終わりを告げる。
ある日、激昂した母が部屋に入ってきた。
彼女の手が伸び、PCの電源ケーブルを掴む。

ブツン。

画面が暗転する。
それは、単にゲームが強制終了した音ではなかった。
私の「世界」が、物理的に切断された音だった。
「ネットは禁止よ!」母の言葉は正論だったかもしれないが、当時の私にとっては死刑宣告に等しかった。
私は魂の抜けた人形のように、ただゲーセンに入り浸るだけの日々を送った。

第3章:覚醒とハングリー
定時制高校 〜 アルバイト

「このままでは、終わる」
本能的な恐怖に駆られ、私は高校への進学を決めた。
選んだのは、夜間の定時制高校。
しかし、母との関係は冷え切っており、学費の援助は期待できなかった。

「自分で払うしかない」
16歳の少年は、生きるために労働市場へ放り出された。
昼はファストフード店、夕方からは居酒屋。
バイトを掛け持ちし、クタクタになった体を引きずって、夜の学校へ通う。
同世代が部活だ、恋だと青春を謳歌している時間に、私は厨房の油にまみれ、客に頭を下げていた。

「こんな場所で、
終わってたまるか」

そのハングリー精神は、私を「勉強」へと向かわせた。
be動詞すら分からなかった私が、狂ったように英語を貪った。
ネトゲで培った「攻略脳」がここで火を噴いた。ルールを解析し、最短ルートでレベルを上げる。
2ヶ月後、英検2級合格。
その通知書を手にした時、私は震えた。「やれば、できる」。
それは、ピエロでもギルマスでもない、「私自身の力」で勝ち取った初めての勲章だった。

第4章:社会という名の不条理
大学 〜 新卒 〜 退職

大学進学を果たし、起業家に会うためにシンガポールへ飛ぶなど、行動力だけは誰にも負けなかった。
そして卒業後、某メーカーに就職。営業職としてスーツに袖を通した。

「安定した生活」
世間が言う「正解」のルートに乗ったはずだった。
だが、会社という組織は、私にとってあまりにも窮屈すぎた。

「きこにい君、この提案書修正してくれ。社内保管用に」
「意味が分かりません。先方の了承は得ています。無駄な作業より、新規を取りに行くべきです」
「うるさい! 上司の言うことが聞けないのか!」

非合理な慣習。無意味な忖度。
ネトゲの世界では「実力」が全てだった。定時制時代は「生存」をかけて戦ってきた。
そんな私にとって、会社の論理はただの「茶番」にしか見えなかった。

退職届。

私は早々に組織に見切りをつけた。
フリーランスとして独立したが、現実は甘くなかった。
日雇いバイトで食いつなぐ日々。「オレにしかできないことは何だ?」
泥水をすすりながら問い続けた先に、一つの答えがあった。「マーケティング」だ。

第5章:1.6億の熱狂
起業 〜 絶頂

法人設立。
私が立ち上げたマーケティング会社は、時代の波に乗り、爆発的な成長を遂げた。
自分の戦略が面白いようにハマる。数字が増えていく快感。

年商、1.6億円。

従業員を雇い、オフィスを構え、若き社長として君臨する。
新卒時代のあの上司を見返してやったという優越感。
プライベートでも結婚し、最愛の妻と共に、都心の広いマンションへの引っ越しを計画する。
「オレは人生の勝ち組だ」
誰もがそう思い、私自身もそう信じて疑わなかった。

だが、私は気づいていなかった。
高く積み上げた積み木ほど、崩れる時は一瞬だということに。

第6章:崩壊
詐欺被害 〜 2億円の負債

ある休日の朝。
一本の電話が鳴った。
「もしもし、きこにいさんですか? 落ち着いて聞いてください」
その電話の内容を理解した瞬間、私の背筋は凍りつき、視界が歪んだ。

詐欺被害。

それは、会社を倒産に追い込むには、あまりにも十分すぎる金額だった。
会社のキャッシュは枯渇し、取引先への支払いが滞る。
経営者として、最も残酷な決断を下さなければならなかった。

「すまない。会社を畳むことになった」
集めた従業員たちに頭を下げる。
昨日まで「一緒に夢を見よう」と語り合った仲間たちを、自分の手で路頭に迷わせる。
全員解雇。

負債総額、
2億円。

残ったのは、莫大な借金と、抜け殻になった自分だけ。
自己破産。
積み上げたキャリアも、社会的信用も、プライドも。全てが消えた。
結婚したばかりの妻に、こんな地獄を見せることになるなんて。

第7章:虚無と焦燥
ニート 〜 社会からの切断

それからの日々は、記憶が曖昧だ。
定職に就こうとあがいたが、かつてのプライドが邪魔をする。
「なんで俺がこんなことを」
そんな腐った性根を見透かされるように、仕事は長く続かなかった。

気づけば、私は部屋に引きこもっていた。
ニート。
年商1億の社長から、社会の底辺へ。
「俺の席は、もうどこにもない」

「何か……オレにしかできないことはないのか……」

天井を見上げながら、自問自答を繰り返す。
そんな絶望の淵で、ふと、古い記憶がフラッシュバックした。
小学生の頃の教室。ゴリラのモノマネをして、みんなを笑わせていた自分。
MMORPGで顔も知らない仲間たちを束ね、熱狂していた夜。

「これだ!!」

雷に打たれたような衝撃が走った。
オレには、何もない。
金も、地位も、信用もない。
だが、「失敗」ならある。「恥」なら売るほどある。
この泥にまみれた無様な人生そのものが、誰にも真似できない「コンテンツ」になるんじゃないか?

最終章:終焉祝祭の開幕
配信者としての再生

「オレは、配信者になる」
妻にそう告げた時、声は震えていたかもしれない。
元社長が、いい歳をして、画面に向かって喋る。
世間から見れば「終わってる」男の、最後の悪あがき。
だが、腹は決まっていた。

TikTokという荒野に降り立った。
プライドは捨てた。
「1.6億溶かした」という最大の汚点を、看板として掲げた。
石を投げられる覚悟で、カメラの前に立った。

「おはよう世界! さあ今日も始めようか」

最初の配信。
視聴者数(同接)、1人。
その「1」という数字が、私の妻であることは分かっていた。
それでも、私は叫び続けた。
かつて教室でピエロを演じた時のように。
ギルドで仲間を鼓舞した時のように。

「傷だらけの人生ほど、
語れる夜は面白い」

1人が2人になり、10人になり。
「こいつ、バカだな」と笑うコメントが、私には宝石のように見えた。
笑われていい。バカにされていい。
そこに「熱狂」が生まれるなら、私は喜んでピエロになろう。

そして今。
私はまだ、旅の途中にいる。
借金はまだある。生活は楽じゃない。
だが、もう孤独ではない。

画面の向こうには、「共犯者」たちがいる。
私の失敗を笑い、私の再起を信じ、共に泥舟に乗ってくれるイカれた仲間たち。
彼らと共に、私は証明したい。
「人生は、いつからでも、何度でもやり直せる」ということを。