STORY
世界中にある数多のチャンネルの中から、
俺のところに来てくれた「お前」へ。
今日はいつもの歌やゲームの話じゃない。
俺がどうやって「ここ」に辿り着いたか。
その話をする。
ピエロ

小さい頃の俺は、クラスの人気者だった。
遠足で見たゴリラのモノマネ。
先生の口癖の完コピ。
何でもやった。周りが笑えば、それでよかった。
でも、それは「好き」でやってたわけじゃない。
両親は早くに離婚していた。
「うちは他の家と違う」——子供ながらに、ずっと感じてた。
家庭の不安定さに飲み込まれそうな感覚を振り払うために、
自分の居場所を守るために、
必死に「ピエロ」を演じていた。
笑わせれば、ここにいていい。
面白ければ、仲間外れにされない。
そう思い込んでいた。
中学に上がる頃には、ピエロを演じる体力も限界だった。
代わりにのめり込んだのが、ネットの世界。
特にMMORPG。
百人以上のキャラクターを束ねるギルドマスターにまで成長した。
顔も本名も、自分の境遇も知らない仲間たちから頼られる。
その世界だけが、気兼ねなく過ごせる「本当の居場所」だった。
ある日、ゲームをプレイ中に
母親にPCのコンセントを引き抜かれた。
「しばらくネットは禁止よ」
「部活なり受験勉強なりしなさい!!」
人の目を気にして必死に作り出した「安息の地」は、
一瞬にして崩壊した。
人生で初めてのどん底。
味わったことのない孤独感。
学校にも行かなくなった。
ゲーセンに入り浸る日々。
居場所を失った人間は、こうなる。
這い上がり
高校は、夜間定時制に進学した。
母親はこれを許さなかった。
だから学費は、日中にファストフード店と居酒屋を掛け持ちして、
全額自分で払った。
日中はバイト。夜は学校。
友達と遊ぶ時間は、一切なかった。

この頃、動画編集に興味を持った。
でも、すぐに壁にぶつかった。
圧倒的に知識が足りない。
「何者でもない今の自分は、
どこで戦っても爪痕の二つも残せない」
高校2年生にして、初めて「勉強」と真剣に向き合う決意をした。
中学1年生のレベルからの、ゼロからのスタート。
失った時間を取り戻すかのように、勉強に打ち込んだ。
それは未来への「投資」だった。
孤独な戦いの中で、新たな学びが俺を癒やしてくれた。
自分の未来を懸けた大学受験——
突破。
大学時代は軽音楽部に入った。
音楽を楽しみながら、たくさん遊んだ。
人生で初めて、「普通の青春」を手に入れた瞬間だった。
栄光
大学卒業後、某メーカーに営業職として就職。
スーツに身を包んだ。
でも、無駄なことを押し付けてくる上司の姿勢に納得がいかなかった。
価値観の衝突。
早くに見切りをつけて退職した。
その後はフリーで働くも、稼ぎが安定しない。
日雇いバイトを転々とする日々。
定職に就けない生活への焦り。
一念発起して、マーケティングビジネスを手掛ける会社を設立した。
新卒での苦い経験を活かして、風通しの良い社内環境を意識した結果——

事業は、大当たりした。
多くの従業員を抱えるようになった。
結婚も果たした。
都心の広い場所への引っ越しも考えていた。
人生を「勝ち組」として謳歌していた。
——順風満帆は、長くは続かなかった。
転落
結婚して間もなく、
会社が詐欺被害に遭った。
それは会社を倒産に追い込むには、十分すぎる被害額だった。
従業員は全員解雇。
莫大な負債を抱え、追い込まれた。
掴んだ栄光は一瞬で消え去った。
自己破産。
これまでとは比べ物にならない絶望が、
全身を覆った。
虚無
全てを失った。金も、仲間も、信用も。
朝起きる理由がなくなった。
コンビニのおにぎりすら躊躇するくらい、追い詰められた。
スーツは質に入れた。名刺は捨てた。
「年商1.6億」だった男の末路がこれだ。
破産後、定職に就こうと頑張った。
でも、長くは続かなかった。
気づけばニート状態になっていた。
働く意欲がなかったわけじゃない。
でも得意だったマーケティングの分野も、
AIの進化によって自分が立ち入れる場所ではなくなっていた。
「死ぬんだな、俺」
「死にたいんだな」
「でも、死ねないんだな」
うつ病の診断書を握りしめて、薬を飲んで、天井を見てた。
1日が48時間に感じた。何もしてないのに。
妻だけが、隣にいた。
あの時、あいつがいなかったら —— 今、ここにはいない。
妻だけが、隣にいた。
再起
「オレにしかできないことはないのか」
自問自答を繰り返す日々の中で、
一つの記憶に辿り着いた。
教室で必死にピエロを演じていた、
あの頃の自分の姿。
周りの人を笑顔にするために、
必死だったあの頃。
そこで悟った。
「大きな挫折も地獄への転落も全部さらけ出した、
オレにしかできないエンタメをみんなに届けよう」
「いいじゃん、声いいんだからやってみなよ」
妻の一言が、最後の一押しになった。

2023年8月。震える手でYouTubeアカウントを作った。
借金のこと、転落のこと、包み隠さず話した。
すると、「きこにい、面白いよ」と言ってくれる仲間たちが集まり始めた。
「弱さ」こそが、人が集まる引力だと気づいた。
そして、同じような傷を持つ奴が、想像以上にいることに気づいた。
多くの後悔や辛い経験を抱えながらも、
俺は前を向き続ける。
「オレにしかできないやり方で!!」
「オレが目一杯笑わせて楽しませてあげるからね」
お前の番
ここまで読んだお前に聞く。
毎朝、同じ電車に乗って、
同じデスクに座って、
「まあ、こんなもんか」と思ってないか?
俺もそうだった。
「安定」という名の檻の中で、
本当にやりたいことを殺してないか?
誰かに愚痴を言いたいのに、
「重い」と思われたくなくて飲み込んでないか?
俺は全部失ったから分かる。
失う前に気づけたお前は、まだ間に合う。
灰になる前に、
まだ燃やせるものがあるはずだ。
その火種を、ここで見つけろ。
この物語は95%がノンフィクションで構成されています。
過去の自分に向けた手紙であり、
たくさんの「やらかし」と、
そこから何かを掴もうとした記録です。
読んでくれたお前が、クスッとしたり、
「自分もまだやれるかも」と思ってくれたなら、
一番嬉しい。
また、どこかで会いましょう。
配信か、イベントか、お前の画面の向こうで。