その日の朝
30歳。配信者になって1年ちょっと。
その日は特別な日じゃなかった。朝起きて、のあを散歩させて、コンビニでおにぎり2個買って、部屋に戻った。
朝の雑談配信を始める時間。9時頃。視聴者は多くて50人くらいの、いつもの平日朝の枠。
その日は気分転換に Bacon the Game をやってみることにした。豚を弾き飛ばすだけのバカみたいなゲーム。「画面酔いするから注意」って警告出るやつ。
冷静に考えると朝の雑談中に流すコンテンツじゃない。でも、そういうノリでやってみたかった。
配信開始
「おはよ。今日 Bacon the Game やるわ」
常連が「は?」「朝からそれ?」「画面酔いやめろ」とコメント。いつもの空気。
ゲーム起動。豚を画面の端まで弾き飛ばす。爆発音。「ブヒィィ」って豚の悲鳴。
俺が朝から豚の悲鳴聞いて笑ってる。視聴者も笑い始める。「朝からなにやってんだ」「うるさいwww」「悲鳴で目覚めるなwww」
数字が跳ねた
10分くらい豚を弾き続けてたら、視聴者カウンターが動き始めた。
50。80。100。150。
おすすめに乗ったんだ。TikTok のアルゴリズムが「この配信盛り上がってるな」って判断して、おすすめフィードに載せた。
200。300。コメントの流れが速くなった。知らないアイコンが大量に入ってくる。
「何この配信www」「急に出てきたんだけどwww」「豚なんなんwww」
400。500。
手が震え始めた。マジで。スマホ持ってる手が震えてた。画面の数字がリアルタイムで上がっていく。あの感覚は忘れらんねえ。
600、700……数字が止まらない。
そこがピーク帯だった。同時接続、数百人。
数百人が、平日の朝、30歳の男が豚を画面の端まで弾き飛ばしてる配信を見てる。冷静に考えると狂ってる。でも最高に楽しかった。
配信中の体感
あの瞬間の体感を正直に書く。
心臓がバクバクしてた。アドレナリンが出まくってた。でも同時に、怖かった。
数百人。画面の向こうに数百人の人間がいる。一つ一つのコメントの後ろに、生きてる人間がいる。その重みが突然ズシッと来た。
「俺、この人たちに何を届けられてるんだろう」
豚の悲鳴だよ。冷静に考えろ。豚だぞ。
でもコメント欄は幸せそうだった。「通勤電車で笑い堪えるの大変」「朝から元気もらった」「今日も頑張れる」。
豚を弾き飛ばす配信で「今日も頑張れる」って。意味わかんねえだろ。でも、それがリアルなんだよ。エンタメの力ってそういうことだ。立派なことじゃなくていい。くだらなくていい。人を笑わせられたら、それで十分なんだ。
でも月収3万円
数百人同接の朝。フォロワーも増えた。数字だけ見たら「すげえ」ってなるだろ。
現実を言う。その月の収益、約3万円。
ギフト収益が月2〜3万円。TikTok のギフトは還元率が低い。視聴者が1000円分のギフト投げても、配信者の手元に来るのは300〜400円。
数百人同接の朝も、ギフトは数千円程度だった。だって「豚を弾き飛ばすゲーム」にギフト投げるか? 普通投げねえよ。笑って終わりだよ。
月3万円。時給に換算すると200円以下。コンビニバイトの方が稼げる。
この現実、配信者を目指してる奴は覚えとけ。フォロワー数万でも、月収は万単位だぞ。「配信で食っていく」って簡単に言う奴いるけど、マジで甘くねえ。
人が集まることの衝撃
金にはなってない。でも、数百人が集まったこと自体が衝撃だった。
自己破産して、うつ病で、何もない俺のところに、数百人が来た。
会社があった時代、年商1.6億の社長だった時代でも、数百人を一箇所に集めたことなんてなかった。
金じゃなく、人が集まる。この感覚が、後の「コミュニティビジネス」「人生コンテンツ化」に繋がっていく。
人生コンテンツ化
この日、一つの概念が生まれた。「人生コンテンツ化」。
俺の人生そのものがコンテンツになるんだ。
自己破産も、うつ病も、朝から豚弾く配信も、全部コンテンツ。成功も失敗も、カッコいい瞬間もダサい瞬間も、全部配信のネタになる。
「人生をコンテンツにする」って聞くと、なんかキラキラしたイメージがあるかもしんねえ。違う。俺のは泥臭い。借金と病気と豚だ。キラキラの欠片もねえ。
でも、それでいい。むしろそっちの方が強い。
完璧な人生は参考にならねえ。ボロボロの人生の方が「俺でもいけるかも」って思わせられる。
数百人が教えてくれた。お前の人生、捨てたもんじゃねえぞって。
豚がな。豚が教えてくれたんだよ。人生の真理を。
笑えよ。
豚に救われた話の続きは、アジト(無料のDiscord)で。名前は聞かねえ。いつ抜けてもいい。
